郵便の使命は? 前島密の名前の意味



 郵政省がついに民営化されましたが、日本の郵便制度を最初につくったのは、明治のはじめ、ヨーロッパに行って郵便制度の勉強をした、前島密(ひそか)という変わった名前の人です。

 密の字は、きちんと解説した本も少ないようですが、ウカンムリ、必、山、を合わせたものです。
 「必」の字のもっとも古い形は、ヒシャクの水がこぼれかけたような状態をえがいています。つまり、水がいっぱいになった状態をあらわし、「ほかのモノが入りこめない」「それしかない」ということから、「かならず」という意味になったのでしょう。
 この「必」が入っている字が、「秘」と「密」です。私たちは合わせて「秘密」という熟語で使っています。
 そして密の字のウカンムリ(屋根)も、山も、ほかのものを入りにくくさせる障害物をあらわしているのではないでしょうか。だから密の字も、「はいりこめない」ということをあらわすのです。
 そうなると
前島密の名前は、まるで郵便そのものをあらわす名前にみえます。
 もともとヒシャクといえば、いかにもむかし飛脚が手紙を運んでいた、あの棒のついた箱に似ています。
 そして、郵便でもっとも大切なことは何でしょうか?
 今でこそ郵便局は金融、保険、そして旅館や結婚式場の経営まで手広くやっていますが、もとは手紙や荷物を運ぶ、いわゆる運送業だったわけです。
 運送ですから、なるべく早く相手に届くほうが便利です。では、早く届きさえすればいいのでしょうか?
 いや、もっと重要なことがあります。それは、秘密を守ることです。
 私たち、少しぐらいおくれて届くのはガマンできても、途中で誰が開くかわからないとなると、郵便でモノを送る気なんかしません。指定した人だけが開くんだ、という保証があってこその郵便です。
 戦国時代など、めざす人だけに手紙を送って読ませるのにどれほど苦労したことでしょう。年賀状やクリスマスカードとわけがちがい、やたらな人に読まれたらそれこそ人の命、国の運命にもかかわります。
 明治になって、国民が安心して利用できる郵便制度をととのえた人の名が、よりによって
であったとは、偶然とはいえ、何ともありがたい気がしないでもありません。
 ただ、ひとつだけひっかかることがあります。
 そもそも郵便局というのは、駅前にあってこそ便利で、機能をはたすはずなのですが、いま、多くの郵便局が駅から遠くはなれ、ときには迷路のような住宅街にあったりします。やっと見つけても、帰り道がわからなくなるほどです。
 障害物に囲まれ、かくされた状態をあらわす
という名は、今の郵便局の立地の悪さまで予言していたのでしょうか。