: 当選確実 |
今回は人の名前からちょっとはなれて、いわゆる呼びかた、呼び名についてです。 よび名というのは、実体とイコールであることもあれば、ちがうこともあります。 たとえば阪神大震災がおきたとき、はじめは兵庫県南部の地震とか呼ばれましたが、「そんな局地的な言い方はおかしい」ということになり、阪神淡路大震災と名づけられました。 これは震災の直後に、被害の範囲や規模が政府に正確に把握できていなかったためで、まだまだ日本の情報システム、危機管理はおそまつだということかもしれません。 むかし、戦時下の言論統制のもとでは、呼びかたというのは情報操作の道具でもありました。 たとえば日中戦争を日華事変と呼ばれると、「なあに、ちょっと変わった事件で、戦争というほどのモンじゃない」という印象をうけてしまいます。 退却を転進と呼ばれると、戦局が有利なのか不利なのかわかりにくいですし、全滅を玉砕と呼ばれると、なにやら美しい死にかたのようなイメージすらわきます。 こうしたことは世界中にあります。侵略を解放と呼ぶと、まるで相手の国民を助けているみたいですし、虐殺を粛正と呼べば、ただ悪者をとりしまっている感じになります。 いま日本では、イラクへの自衛隊派遣が行われています。どう見たってまちがいのない軍隊をいまだに自衛隊と呼んで、軍隊ではないと世界に言いはり、国内では憲法違反の存在だという最高裁判決がおりたままで、海外へ行くたびにつじつまが合わず、日本人自身が混乱しています。 「イラクにも安全な場所があるだろう」などと意味不明のことを言って戦地へ行かせましたが、憲法違反の公務員なんてどこの国にもないのです。どうしても行かせたいなら、「戦地へ行ってくれ」と正直に言い、誇りをもって任務につけるよう、国をあげて軍隊としての実体を認めてきちんとした装備を与え、それにふさわしい呼び方をしてあげてはどうでしょうか。たとえば国際支援軍とか…。 よび名というのは、実体とくいちがうほど、イメージ操作につかわれやすく、ものの判断を狂わせます。たとえば脱税を申告もれ、売春を援助交際と呼んであげたりするのは、「なあに、犯罪というほどじゃないですよ」と、まるで金持ちや不良少女のご機嫌をとるような言い方になります。 選挙のさいも、呼びかたでイメージが操作されている面が無いとは言えません。たとえば安定政権などという言葉を聞くと、つい平和な世の中をイメージしてしまいますが、国民が政治に無関心だったり、また政府を批判できないような独裁政治でも、政権は安定します。 またマスコミでよく言う「有権者の選択」「無党派層のゆくえ」といった表現も、「あなたがたの意志が反映されますよ」という印象をあたえ、私たちをちょっぴり勇気づけてくれます。しかし実体はそうではない、ということを、べつの言葉が示しています。それが当選確実という言葉です。 開票率1%やそこらで当確が出るのは、99%は見なくてもわかってるヨ、ということで、「この選挙区なんか、チラッと出口調査しときゃわかるよ。どうせほとんど固定票だからネ」と言われているようなものです。 たしかに選挙結果を早く知りたい人も多いですし、わかっていることは早く報道していいのですが、それにしても「当選見込」くらいの言いかたならまだしも、当選確実とは…。 というわけで、私たちは選挙のたびに、おだてられたり、コケにされたりしているのです。 |
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