まじないはアブない |
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2004年は、国内で地震や台風の被害がとくに多かった年でした。 むかし、敗戦後まもなくの昭和20年代には、アメリカ式にならって、北半球で発生した台風は女性名で呼んでいました。そして、資料によって数字にちがいはありますが、そのころ日本を襲った台風は、今では考えられないようなケタのちがう被害を、毎年くりかえし出していました。 1947(昭和22)年 キャスリン台風……死者・不明者2247人、家屋倒壊5301戸 1948(昭和23)年 アイオン台風………死者・不明者2368人、家屋倒壊16683戸 1949(昭和24)年 デラ台風……………死者・不明者612人、家屋倒壊2500戸 1949(昭和24)年 キティ台風…………死者・不明者160人、家屋倒壊3712戸 1950(昭和25)年 ジェーン台風………死者・不明者508人、家屋倒壊14796戸 1950(昭和25)年 キジア台風…………死者・不明者49人、家屋倒壊2000戸 1951(昭和26)年 ルース台風…………死者・不明者1200人、家屋倒壊24705戸 こんな大きな被害を毎年出していた理由はいくつかあります。 もともと日本が都市整備があまり行われない国であるということもあります。また、あのころはほとんどの人が、敗戦後の焼け野原に応急的につくられた粗末な木造住宅に住んでいました。しかも、今のように気象衛星で何日もまえから台風の予測ができるわけではなく、予報が出たあと、あっというまに台風が来たのです。 言うまでもないことですが、いくらかわいらしい女性の名をつけても、台風を早目に予測できず、都市や住宅が無防備であれば、大きな被害は出るわけです。 名前と実体がこのようにくいちがうことは、よくあることです。 たとえばいま、原子炉に普賢、文殊などと、菩薩の名がつけられたりしています。菩薩(ぼさつ=ボーディサットバ)とは、仏教で最高の修行者をさし、とくに私たちになじみぶかいのは観音さま(観世音菩薩)や、お地蔵さま(地蔵菩薩)です。それにしても、菩薩と原子炉では、あまりにかけはなれています。 これらの原子炉では、これまでも何度か大事故すれすれの事態がおきていますが、あまりに慈悲ぶかい名前にすることで、かえって危機管理が甘くなる恐れがあります。 原発は、平時でも厳重すぎるほどの危機管理が必要です。しかも大地震やテロにどんな対策がなされているのか不明です。もし戦争でも起きてミサイルで攻撃されれば、チェルノブイリ原発の爆発事故のような大惨事をまねきます。 原発というのは、ありがたい菩薩の名前をつけて安心するようなものではなく、むしろ「ゴボラ」とか「ガメラ」とか怪獣みたいな名前で呼んで、その恐ろしさを片時も忘れないようにしたほうがいいのです。 名前をまじない、イメージ作りに使うと、一番必要なことを忘れて結果がウラ目に出てしまうことも多いのです。人の名づけもそうです。たとえば「健康」をあらわす名前にしたから、病気には気をつけなくていい、ということにはなりません。「もしかして、名前でまじないをしてはいないか」とふりかえってみるのも大事なことです。 |
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