原爆はしょうがない 久間章生 |
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「原爆はしょうがない」の発言がもとで、防衛大臣の久間章生(きゅうまふみお)氏が辞任しました。日本では失言で責任をとらされる政治家はよくいますが、本当は政策、能力と弁舌はべつのことかもしれません。
名前のなかの章の字については、村主章枝さんのところでものべましたが、最古の字体はモノを刃物で突いたような絵です。これより「区切りをつける」の意味で使われ、いまでも文や音楽の区切りをあらわし、また彰(はっきり見分けられる)、樟(大きく目立つクスノキ)、障(区切るための建造物)、璋(模様のある宝石)の字にも含まれています。 そして久間章生氏の場合は、「区切りをつけて生きる」という意味の名前は、そのまま発想のしかたをあらわすシンボル名前にみえます。 防衛とは、露骨に言ってしまえば、外国の侵略に武力で対抗し、場合によっては殺し合いをすることです。つまりきれいごとを言える分野ではなく、現実に即した分析と機敏な判断が求められます。 前防衛庁長官の石破茂氏も現実的な歴史観から防衛を語った人ですが、久間章生氏も、大量破壊兵器を理由としたアメリカのイラク戦争には反対、しかし米軍の嘉手納基地の地対空誘導弾(パトリオットPAC3)の配備には賛成、というふうに、同じアメリカの行動にも、あれはあれ、これはこれと区分けしながら考えを明確に表明しています。 どんなことにも賛否両論はありますが、つねに考えの筋道をハッキリさせることは防衛のトップとして最低の条件です。しかも剣道6段、囲碁5段の久間氏なら、相手の出方にすばやく対応する戦いの機微は、ふつうの人よりずっと鋭いはずです。彼はとくに防衛大臣に不向きな人ではなく、だからこそ橋本内閣の時代から防衛の役職をつとめてきたはずなのです。 今回の発言も「原爆によって戦争が早く終わったと考えて区切りをつけるしかない」という意味だったのでしょうが、ただこれだけは日本の実状と合いません。もっとも選挙前だからとはいえサッサと辞任したのは、やはり区切りをつける発想でしょう。 でもこういうことは選挙がらみで考えることではなく、歴史そのものを考える機会でもあります。ひとつの国際的な事件でも国によってまるで言い分がちがうように、歴史というのも、真実関係が不明なことも多いうえ、国により、立場により、いろいろな解釈、言い分がでます。つまり歴史はかならず複数あるということです。(ですからよその国の歴史の教科書には口を出さないのが国際社会の暗黙のルール、最低のモラルです) 「原爆で戦争を早く終わらせた」というのは、悲しいかな、欧米ではふつうの歴史観です。アメリカでは原爆が必要だったと思っている人もかなりいますし、日本に原爆を落としたことすら知らない人も多いようです。 でも日本はまったく事情がちがう国です。欧米による4世紀以上にわたる何億人もの有色人種の虐殺、奴隷化に異議をとなえ、抵抗をした国であり、原爆で多くの市民が犠牲になった唯一の国であり、しかも60年以上戦争をしていないめずらしい国です。日本こそが、戦争の悲惨さと平和の尊さを、歴史、文化、体験をふまえて表明する資格のある国で、どんなに無視されても、世界の暴れん坊たちに核兵器の廃絶をうったえつづけようというのが日本の姿勢です。 そんななかで現職の防衛大臣が、原爆を落としたがわのリクツと同じことを言うのは、被爆者に失礼なうえ、「日本の主張は変えるよ」と公言したことになります。 またこの発言の背景に、歴史観のない国の底なしのあわれさも感じさせます。 自分の国には自分の国の歴史観があり、いくつもの歴史観を自由にくらべられてこそ、歴史の流れは見えるはずです。そして自分のがわから見た歴史観をもっていてこそ、国の方向、主張をきめられるはずです。 でも日本は戦争の被害があまりに大きかったので、「悲惨な戦争はもうイヤだ」「だから外国と衝突するな」ということで、外国の機嫌をそこねないように聞きしたがう国になっています。さすがに原爆の被害者は多いので久間発言だけは受け入れられませんが、ほかのことではよその国の歴史観ばかりがまきちらされ、しみわたり、侵略者、犯罪者というレッテルをおしいただいていつも悪びれています。 ですから原爆以外のことでは、外国のがわからモノを言う日本人も多く、外国から「叩けばうずくまる国」と喜ばれるように、外国人の言うことをウのみにして合唱するのがまるで正義、ファッションみたいになっています。 でも防衛はまさに正反対のもので、独立国の形態と尊厳を守ることです。外国が押しつける歴史観に吟味もせずに食いつけば、賠償問題がおきたり領土を取られたりで、防衛は成りたちません。いいかえれば、いまの日本のような国で、防衛のトップにふさわしいしっかりした歴史観、見識、戦略をそなえた人材をさがすことがいかに大変か、ということでもあります。 参考図書:「日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する」(小室直樹・ワーク出版) 「東京裁判を裁判する」(渡部昇一・致知出版社) 「新 歴史の真実 混迷する世界の救世主ニッポン」(前野徹・講談社) |
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