男性の証し 亀井静香


 いま郵政事業がまた大きく見直されようとしています。今回の推進者は言うまでもなく亀井金融担当大臣です。彼の名は本当は「靜香」と旧字で書くらしいですが、マスコミでは新字で報道されています。そして静香はふつうは女性につけられる名前で、これは亀井氏の場合はかなり意味がありそうです。
 男性が女性の名前をつけられた場合、人によっていろいろなケースはありますが、本人が無意識に男性であることを証明するために、ことさら男性的なことに挑み、それが結果として社会で評価されるケースもあります。
 たとえば探検家として名を残した植村直己(なおみ)さんは、巳(み)年の生まれなので直巳とつけられたという話もありますが、なぜかご本人は「直己」の字を使い、世間でもその字で知られていました。どちらにしてもナオミはふつう女性の名で、ご本人は自分の名前がきらいだったという話もあります。彼は登山や探検に挑み続け、世界初の五大陸最高峰登頂者となり、最後はマッキンリーの山中で行方不明になり、そのあと国民栄誉賞を授与されました。
 またプロレスで活躍したジャンボ鶴田さんも、生まれたときに祖母が「女の子のようにかわいくなってほしい」と願って友美(ともみ)とつけたそうです。しかし本人はまれにみる大男になって、格闘技で名をあげました。
 亀井静香氏も、思ったことは是が非でも実現させる意志の強い人で、東大を出たあと、公務員上級試験を優秀な成績でパスし、格闘技では合気道6段の腕をもち、そしてはじめは警察という男性社会にとび込んでいます。しかもマルクスの理論に精通し、キューバ革命を実行したチェ・ゲバラの信奉者でありながら、警察の中で左翼の過激派を相手に激務をこなしながら出世し、政治家に転身して保守自民党の中で頭角をあらわすなど、常識破りで分類のできない人です。そしてあたかも自分の名前を否定するがごとく、だれが見ても静かなタイプではなく、誰をも恐れぬ語り口は、「男性かくあるべし」という姿を強調している感じです。
 ちなみに彼は外国人地方参政権や選択的夫婦別姓にかんしては慎重論をとる少数派ですが、これらは先入観をもってみられやすいことがらですので、亀井氏のような型破りの人の意見も充分に聞いておいたほうがいいかもしれません。
 ところで、男女さかさまの名前の人に社会的に評価された人がいるからといって、もちろんそういう名づけをむやみにしていいわけではなく、よくない結果を招くケースのほうが多いということは忘れてはなりません。気がつかずに男女逆の名前をつけてしまって後悔する人は仕方ないとしても、「かっこいい」「トレンドだ」などと言いながら面白半分にやってしまう親もいます。でもつけられた本人が「ボクは男とあつかわれていない」とか「女の子をほしくなかったんだ」と受けとった場合は、それはまぎれもない精神的虐待になり、親子の不信をまねいたり、ときに情緒障害につながることさえあります。
 名前に関心のあるかたなら、事件にまきこまれた人や犯罪者のなかに、男女逆の名前が意外によくみられることに気づくはずです。過去にはそれがもとで子が親を殺害する事件までおきています。ごく最近でも、親の虐待で死亡した男の子に「優衣」とか「楓」など、女の子の名前がみられました、まさにその子たちは精神的にも物理的にも、両面からの虐待をうけていたといえるでしょう。