よい名前は よい名づけから



 
●制度・手続















   




           ■名前に使える字・使えない字 Q&A


   
       

       名前に使える字         名前に使えない字
 常用漢字・人名用漢字の計2997字体
  左側にあげた使える漢字以外の漢字
        (あたりまえですが)
       ひらがな、カタカナ  漢字以外の外国の文字(アルファベットなど)  数字(1 2 3 TUV…)
 のばしたり、くりかえすための符号
       
(ー ゝ ゞ 々)
 記号のすべて      ※ ☆ ♪ ∫ √ ♯ ≧ ¥ @ ÷ ♀ ♂ $ %

                Q&A

 常用漢字って何でしょう?
 1981(昭和56)年に文部省がきめた範囲の字で、現在は2136字があります。社会生活でよく使う字ということらしく、新聞や雑誌はだいたいこの範囲の漢字がつかわれます。

 名前に使える常用漢字や人名用漢字は、名前に向く字なの?
 とんでもございません。名前に向かない字がほとんどです。名前に使える漢字の範囲は、人の名前に向くかどうかということとまったく関係なくきめられています。

 男の子に使う字、女の子に使う字の区別はあるの?
 法律上はありませんが、現実には男の子にしか使われない字、女の子にしか使われない字はあります。たとえば彩の字は女の子にしか使われず、男の子の名にいれると奇妙には見えます。

 名前に向く字はどのくらい数があるの?
 漢字の好みは人により、時代によりちがいますが、今の時点で、字の成り立ち、意味、使い勝手などから考えますと、名前に向く字は600くらいでしょう。この600字だけを使って2万、3万という名前が作れますから、少ないとはいえません。

 漢字が名前に使えるかどうかはどうやって調べるの?
 私たちが日ごろ読み書きしている漢字はほとんど使えます。常用漢字、人名用漢字と表記している辞典も多く、その表記がされている漢字は名前に使えます。旧字や異体字については辞典でもわからないことが多いですが、社会生活で不便なことが多いですから、使わないほうが無難です。

 親がつけた名前を役所が変えさせたら、うその届け出の強要じゃないの?
  これはよく誤解されることですが、名前は親がつけたから生じるのではなく、戸籍に登録されて生じるのです。名前は社会の共有物で、わかりやすくいえば図書館の本と同じです。「この本を図書館へ寄付する」と決めただけでは、図書館の本は生じません。届けて、受け取られて、生じるわけです。
 使えない字を入れた名前は違法で、戸籍にのせてもらえません。つまり生じることができないのですから、やはりそれはうその名前で、戸籍に登録された名前が本当の名前なのです。


 人名用漢字って何ですか?
 法務省が常用漢字のほかに名前に使える字として指定したものです。1951(昭和26)年にはじめて制定されてから、これまで何回もその範囲がふやされています。法律上は「別表第二」の漢字とよばれます。ただし常用漢字とこの「別表第二」の漢字を全部合わせて「人名用漢字」とよばれることもあります。

 なぜ名前に使う字を制限するのですか?親の自由じゃないの?
 そういうご意見の人も多いですが、ただどんな文字でもいいとなると、誰も読めない名前が世の中にあふれ、印刷物の作成も支障がでてきます。5万をこえる漢字すべてを使わせるのは、ふつうの日本人が知っている2千字くらいの漢字の25倍に範囲を広げる、ということです。そんなことをして誰がトクをするのか、社会に何のメリットがあるのか、と考えると、わざわざそういう主張をする理由もみつからないのです。

 旧字体でも名前に使えるの?
 字によって旧漢字が使えるものと使えないものがあります。ただし他人はなかなか旧字を書いてくれず、社会生活で新字と旧字の両方を使うようなことになって混乱し、旧字にするメリットは何もありません。わざわざ人迷惑なややこしいことをしなくてもいいとは思います。

 使えない漢字で名前をつけ、出生届はウソの名前を書いておくのはいい?
 残念ながらそれは成りたちません。戸籍に登録された名前が本当の名前です。使えない漢字で名前をつけること自体、法律で禁じられており、いくらつけたと言ってみても、違法で存在できない名前ですから、やはりそちらがウソの名前、ということになるのです

 名前に使えないのはどんな漢字?
 これは多すぎてリストにできません。漢字は全部で5万をこえ、名前に使える字は3千弱ですから、全体の17分の1です。私たちが日ごろ書かないような字は注意したほうがいいでしょう。

 名字には使えるのに名前に使えない字があるのはなぜ?
 名字は先祖から伝えられてきて、永いあいだ多くの人に使われています。その名字の字をいきなり禁止したら社会的な混乱をまねきます。しかし個人の名前をこれからつけようという場合は、やはり社会で多くの人を困らせる特殊な字はやめてくださいね、ということでしょう。

                  名前に使える漢字の決め方

 名前に使える漢字は、これまで要望にこたえる形で、つぎのように決められてきました。

   時 期  文部(科学)
 省が決める
 漢字表
 
法務省が指
定する別表
の漢字
  
  
1947(昭和22)年 当用漢字1850字 1850字
1951(昭和26)年 法務省が92字を指定 当用漢字1850字 92字
1942字
1976(昭和51)年 法務省が28字を追加 当用漢字1850字 120字 1970字
1981(昭和56)年 文部省が常用漢字を制定
法務省が8字を削除、54字を追加
常用漢字1945字  166字 2111字
1990(平成2)年 法務省が118字を追加 常用漢字1945字  284字 2229字
1997(平成9)年 訴訟により琉の1字追加 常用漢字1945字  285字 2230字
2004(平成16)年 訴訟により曽、駕、獅、毘の4字
および瀧の1字体を追加
常用漢字1945字  983字体 2928字体
2009(平成21)年 訴訟により穹、祷の2字追加 常用漢字1945字  985字体 2930字体
2010(平成22)年 文科省、常用漢字196字追加
勺錘銑脹匁の5字削除
法務省、5字追加・129字削除
常用漢字2136字  861字体 2997字体
平成16年の追加のとき「字種」と「字体」が混同され、常用漢字の字種、字体、人名用漢字の字種、字体、という基本の区別がひっかきまわされてわからなくなったため、今では字体という言葉しか使われなくなりました。

 名前に使える漢字は、このように、
文部省のきめた漢字ぜんぶ + 法務省がきめる別表の漢字
というふうに決められてきています。そして文部省が決める常用漢字はもちろん、法務省が決める別表も、名前については考慮しません。これは根本的におかしなジレンマなのですが、名前に使える漢字の範囲を決めるとき、名前にふさわしい字かどうかはいっさい吟味しないのです。
 そのために名前に使える字というのは、大部分が名前にふさわしくない字です。極端
にいえば、死、痴、病、毒、餓、邪、敵、泣、豚、蛇、悪、汚、盗、貧、暗、葬、殺、罪、墓などの字はみな含まれます。また悪い意味でなくても、壁、歯、焼、針、黎、油、燦、捷、秒など、名前に使いにくい字が大半をしめます。また電話で説明できない字、活字に変換できない、手書きでしか書けない字もかなりあります。もちろんそんな字を名前に入れれば、本人も不便ですし、世の中で多くの人が被害をうけます。

                 要望や訴訟をむやみにしないこと

 「名前に使える漢字を増やせ」という要望や、「この字を使わせろ」という個人的な訴訟は、これまで何度も行われてきましたし、今も続いています。でも、私たちが国にそういう主張をするとき知っておくべきことは、相手は名前についてはズブの素人であり、名前に向く字かどうかはまったく考えず、数だけ増やしてしまうということです。その結果はすべて私たち自身にのしかかるのです。
 
名前に向く字で使用できない字というのは、ほとんど残っていません。この後におよんで「字をふやせ」「自由にさせろ」と言い続けると、ムダな税金が湯水のように使われ、名前に不向きな字が大量に増やされてしまうのです。もういいかげんに要望や訴訟はやめたほうがよいでしょう。
 今の日本の中年以上の人が知っているおおよそ2000字の漢字を使ってさえ、まちがった読みかたの名前、人に読めない名前がたくさんつけられています。それが野ばなしのまま、さらに学校でも教えない、ふだん目にしない字が無作為にふやされれば、うっかり名前に不向きな字をつかって後悔する人はでるでしょうし、わかりにくい名前、手書きでしか書けない名前、つまり社会で役目をはたせないような名前はますますふえてしまいます。
 めくらめっぽうに漢字の数をふやせば、社会(私たち全員)が迷惑することになるのです。


 もちろん「漢字をふやせ」という要望が、社会の流れにかなうこともあります。たとえば、つぎのような状況でしたら、人名用の漢字をふやすのもよいでしょう。
  日本人の知っている漢字がふえつつあり、中国や日本の古典を読む若者もふえている
  名づけでは、「人に迷惑をかけない」ということを、だれもがもっとも重視している
  ふやした漢字は、ワープロでもメールでも、すぐにメニューから変換できる
 今の日本の社会はまるっきりちがいます。活字ばなれは急速で、年齢がさがるほど、知っている漢字は少なくなっています。
 字画占いにしたがって名づけをする場合は、使える漢字が大幅にへり、つけられる名前もかぎられてきます。世の中には「名前に使える漢字をふやせ」という要望が多いのに、字画占いにしたがって名づけをする人も多いのが、面白い現象です。


                      表現の自由について

  世の中には、「名前にどんな字を使おうが自由なはずだ」と先に答をきめてしまう意見や、「名前に使う字を制限すること自体、表現の自由の侵害だ」と、憲法を引き合いにだす意見もあります。
 ただ残念ながらこういう言い方は具体性がなく、言葉あそびになりやすいのです。
 では本当に、外国のどんな文字で名前をつけてもいいのでしょうか?
 「いや、漢字だけ自由にすればいい」という意見もありますが、では私たちは漢字をどれくらい知っているのでしょうか?
 私たちはふだん漢字を使い、漢字を知っているつもりでいますが、漢字は全部で5万をこえます。私たちが知っている漢字は、多い人でも2千字くらいで、漢字全体の25分の1です。

 「制限をなくせ」というのは、「私たちの知っている漢字の25倍の範囲にしろ」ということで、右にあげたような名前を自由につけさせろということです。それはほんとうに社会全体のためを思ってのご意見なのでしょうか?
 また、「そんな読みにくい字や意味の悪い字をわざわざ使う人はいない。親の良識にまかせればいいことで、国が干渉することではない」という意見もあります。
 でも実際は漢字の制限があってすら、人に読めない名前、男女まちがえる名前はふえつづけています。
 「人の良識、モラルを信じる」というリッパな言葉にはだれも反論できませんが、だから世の中に法律、規則、ルールがなくてもいい、ということにはなりません。良識があるから規則はいらない、というのがもし本当なら、規則があっても支障ないはずです。
 また誤解してはならないのは、憲法でいう「表現の自由」は、法律にふれないかぎり、公共の福祉に反しないかぎり(つまり社会に迷惑をおよぼさないかぎり)、言論や、文章、作品の発表が弾圧されることがあってはならないという意味です。
 「どんな字でも使って、人に迷惑をかける名前をつけなさい」と保証している条文ではありません。
(昭和26年4月9日東京高裁)


             追加漢字の質にたいする牧野くにおの批評

              追加漢字の弊害にたいする牧野くにおの警告